2010年10月20日

曲目解説1 50周年ツアー

間宮芳生:風のしるし・オッフェルトリウム(04年舘野泉に献呈)
Michio Mamiya:Wind Wrougdht‐Offertorium(Dedicated Mr.Izumi Tateno)
『風のしるし』の風とは、アメリカ先住民族ナヴァホ族の創世神話で語られる風の神のことである。ナヴァホの人々は、この地上に生きるものすべての誕生の時、生命を与えてくれるのは風の神であると信じてきた。
第1曲 プレスト(さわがしく) 風の神の小指から吹き出すつむじ風のイメージ。
第2曲 モデラート(山にいて夜毎鳴く鳥の声・・・)  冒頭のモティーフは、軽井沢の山のコテージを囲む森に来て朝・夕にうたう鳥のことば。
第3曲『三つの聖詞』より 第1曲 
第4曲『三つの聖詞』より 第4曲
1979年に作曲したギター独奏曲『三つの聖詞』の中からピアノ左手用に書き直された
もの。第3曲は風紋、第4曲は体内をひそかに吹く風を体感するというテーマに基づく。
第5曲 小さなシャコンヌ
フィンランドの古い民謡で、はじめも終わりもなく旋回するような旋律主題による小さなシャコンヌである。
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曲目解説2 50周年ツアー

末吉保雄:四重奏曲「アイヌの断章」〜左手ピアノ、フルート、コントラバス、打楽器のために(演奏生活50周年を祝し 舘野泉に捧げる/「舘野泉左手の文庫」助成作品)
Yasuo Sueyoshi: Dedicated Mr.Izumi Tateno The Premiere
1 銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに (知里幸恵訳「アイヌ神謡集」より)
2 トーロロ ハンロク ハンロク!(知里幸恵訳「アイヌ神謡集」より)
3 侵入者たち
4 エピソード…大きな蕗の葉の下に…
5 2羽の鴎が舞う
曲は曲目に記されているように、短い題字のついた5つの部分から成っている。
「銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに」は、夭折した知里幸恵(1903-1922)訳編による『アイヌ神謡集』巻頭の詞。の神が、こう歌いながら流れに沿って下り、村の子供たちの上を通る。「トーロロ ハンロク ハンロク!」は、同集中の蛙の声。悪戯が過ぎて偉い神様から薪の燃えさしを投げつけられる。これらは、半世紀を超えて私の胸中に在る。「侵入者たち」は、アイヌの地に入り込み狼藉を重ねる人たちへの恐怖の記憶。具体的に伝承、事変を描くものではないが、ひとつの伝説(コロポックル)もエピソードに加えた。「2羽の鴎が舞う」は、更科源蔵の著書『アイヌ文学の謎』にある。音楽は失われているが、2人で鴎が両翼をのばしたように両手を広げて舞う、海の幸への感謝。
アイヌの音楽を引用、模写改編するものではない。拙い創作は『アイヌ神謡集』への讃。音楽活動50周年を記念する大学の同級生、舘野泉へのお祝いのしるしとしたい。
(末吉保雄)
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曲目解説3 50周年ツアー

Coba:記憶樹(「舘野泉左手の文庫」助成作品 08年舘野泉に献呈)
coba:ALBERO DI MEMORIA/PER IL PIANOFORTE ALLA MANOSINISTRA (PER Izumi Tateno)
1.深遠な予感
2.果敢な叫びを上げよ
3.嘆きと自負
4.宿命
5.回廊
6.バルカロール
7.信頼
8.果敢な叫びを上げよ BIS
9.カオス
10.根源的な回想
「好きになる」とは実に不思議なことだ。ふとした人生の瞬間にそれは不意に訪れ、何の前ぶれもなしに憑依して離れない。時にそれは、われわれを思いもよらないところに連れ去ってしまう。その結果われわれの人生は、その発端から恐ろしく遠い結末を迎えることとなる。「好き」な感覚は人のDNAを沸騰させ、どんなにエドゥケーションと高いインテリジェンスを誇る者をも完全無防備にし、見事なまでに幼児化させる。そんなわけでこの魔法の感覚は、人にごく強いモチベーションを与える力を持つ。「好き」なことのために人は情熱を注ぎ、またその持てる時間を惜しみなく捧げ尽くす。この原始感覚がどこから来るのか、明確な答えを知る者はまだいない。 記憶樹は、人の感覚と繋がっている生命体だろう。感覚と肉体は共にあり、精神はそれに宿っているものだから、どうやら記憶樹とわれわれの精神には深い繋がりがあるようだ。記憶樹がいつから在るのか、どこに在るのか、また自身の存在として在るのか…あるいはそれは、突如舞い降りる神のような存在なのかもしれない。僕がこの作曲をしていたある日、ブログにたまたま書いた「ゴリゴリ」という言葉が、何と舘野さんのコンサートツアーのタイトルになってしまっていて、とても驚き、そして光栄に震えた。きっと絶えず未来を渇望し、模索し続ける天才舘野さんに記憶樹がフッと舞い降りたのだろう。きっと記憶樹の原始の力が、舘野さんの左手に未知なるパワーを与えてくれるだろう。
ゴリゴリと…
(2008.9.8 coba)
posted by JapanArts at 09:47| 演奏曲目解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

曲目解説4 50周年ツアー

吉松 隆:組曲「優しき玩具たち」 〜左手ピアノ、クラリネット、トランペット、ヴァイオリン、チェロのために(舘野泉に捧げる/「舘野泉左手の文庫」助成作品)
Takashi Yoshimatsu: Tender Toys Suite(Dedicated Mr.Izumi Tateno)  The Premiere
舘野泉さんの左手のピアノは、次から次へと色々な音楽が飛び出す魔法の玉手箱だ。1年半ほど前、「盟友であるトランペットの北村源三氏、クラリネットの浜中浩一氏と共演できる曲を書いて欲しい。そして一緒にヴァイオリンとチェロを弾く息子たちとも共演できたら嬉しい」とニッコリ笑顔で言われた時、「いくらなんでもそれは無理!」と思った。なにしろ、左手のピアノとクラリネット、トランペット、ヴァイオリン、チェロという世にも不思議な組み合わせの五重奏曲である。そんな編成の作品は「ありえない」!
でも、書いてしまった(笑)。舘野さんが(玉手箱ならぬ)「おもちゃ箱」を開けると、次から次へと色々な玩具たちが飛び出してきて、音楽を奏で始めるのだ。オモチャたちの舞曲や行進曲、クラリネットを吹くピエロの人形、トランペットを吹く兵隊の人形、鳥たちの歌う聖歌、十二音で踊る狂乱のダンス。ただし、子供が開ける「おもちゃ箱」ではなく、大人が(何十年ぶりかで)開ける「玩具箱」だ。そこには、長い時を経てきた色々な思い出や記憶もからまっている。時には、悲しい曲に笑い、楽しい曲に泣くのが「大人」になるということなのかも知れない。
曲は(組曲「展覧会の絵」風に)プロムナードに続く7つの小品(南西からの舞曲/散漫なロマンス/行進曲の遠景/信号手の回想/聖歌を歌う鳥たち/アーノルド博士のワルツ/虹色の祝祭)からなる。2010年春から夏にかけて作曲。op.108。
(吉松隆)

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yoshimatsumusiclibrary@japanarts.co.jp
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